サッカーで鼠径部を痛めた15歳男性の事例

患者情報:15歳 男性

【問診】

<お悩み>

 3~4週間くらい前から足の付け根(鼠径部)に痛みがでて、日常生活の動きにも支障がでるようになりました。

 

<問診でお伺いしたこと>

Q,これまで足の付け根の痛みや、その他ケガで整形外科や整骨院に行かれたことはありますか?

 特にありません。

 

Q,日常のどの動作で、どこにどんな痛みが出ますか?

 階段を登る動きをした時に足の付け根(鼠径部)に痛みが出ました。

 また、足を開脚する動作でも足の付け根(鼠径部)がうずく様に痛みました。

 

Q,運動する時ではどうでしょうか?

 ボールを蹴る動作が痛く、利き足と逆の足で蹴っていました(右利き)。

 走り始めが一番痛く、走っていると徐々に楽になってきました。

 

Q,歩いたり、寝ている姿勢ではどうですか?

 歩いた時や、寝ている姿勢での痛みはありません。

 

Q,サッカーはいつから始めましたか?

 サッカーは小学校低学年から始めましたが、高校入学までの半年間は受験勉強でボールを蹴る機会は無く、走ったりもしていませんでした。

 

Q,運動は今どれくらいの頻度でされてますか?

今は高校でほぼ毎日、部活でサッカーをしています。

 

【検査】

足の付け根(鼠径部)の痛みを調べるために検査を行いました。

 

<動きの検査>

・腰の動きの検査:前屈・後屈の動作では痛みはありませんでした。

 腰を回す動きでも痛みはありませんでした。肩甲骨の動きが悪い状態でした。

・仙腸関節の動きの検査:特に問題はありませんでした。

・股関節の動きの検査:仰向け、うつ伏せの状態で股関節の動きをみる検査では、動く範囲には特に問題はありませんでした。

ただ、仰向けの状態で股関節を内側に回す動作、外側に回す動作など、右足の付け根(鼠径部)を伸ばす動きをすると痛みが出る状態であることがわかりました。

 

<筋力の検査>

 ・足の指の筋力を調べる検査では問題はありませんでした。

 ・お尻(大殿筋・中殿筋)の筋力を調べる検査では、スポーツ選手にしては弱いことが分かりました。

 ・体幹を支える筋力であるインナーマッスルも筋力が弱い状態でした。

<その他の検査>

・痛みのない左足で片足立ちをすると、右側の足の付け根(鼠径部)に痛みが出ました。

・お尻の筋肉、中殿筋の筋力を調べるトレンデレンブルグ検査は陰性でした。

・足の関節の動きは正常でした。

・座った姿勢では、骨盤が後ろに傾き過ぎていることが分かりました。

・骨盤と足をつなぐ筋肉部分(恥骨筋、長内転筋部)を押すと痛みが出ました。その部位に指圧を行ったところ、股関節などを動かした際の痛みが半減しました。

 

【検査結果からわかること】

<痛みの分類>

 太ももの内側の筋肉(股関節内転筋群)を伸ばすと痛みがでることと、その部位(内転筋)に指圧施術を行った結果、痛みが改善したこと、痛みが無い左足で片足立ちをすると、右の足の付け根(鼠径部)に痛みがでることを踏んだ上で、グロインペイン症候群(鼠径部痛症候群)の疑いがあると考えました。

 

<痛みの原因は?>

 高校入学までの半年間サッカーの練習から遠ざかっていたことで、サッカーに必要な筋力が低下したことと、中学から高校に上がるに従い、練習の量や質は上がった一方で、筋力がついてきていないことで鼠径部痛が発生したと考えられました。

お尻の筋肉群(殿筋群)の筋力が不足していたことにより太ももの内側の筋肉(内転筋)が、その分多くの負担を背負って動作を行っていたことと、肩甲骨の動きが悪かったことで、股関節が代わりに動きすぎた結果、太ももの内側の筋肉(内転筋群)が硬くなり痛みが出るようになったと考えました。

 

【施術計画】

<施術期間>

 日常生活を送る上で痛みを感じない状態にする短期プランと、サッカーを行っても痛みが出ない体を作っていく長期プランの2つを提案しました。

太ももの内側の筋肉(内転筋)が硬くなり正常な動きが出来ていない状態だと考え、短期プランは1ヵ月間で筋肉の動きを正常に戻すことをメインに施術を行います。

長期プランでは、お尻(殿筋群)の筋力がついて、その筋力が定着することが必要となるため、2~3ヵ月の期間がかかると考えられます。

 

<施術方針>

お尻の筋肉(殿筋群)の筋力をつけていくためにEMS(波動電流)を使っていきます。

また、患者様ご自身でもお尻周りの筋力をつけるために痛みの発生しない範囲で、横向きになり足を上げるトレーニングを徹底して行ってもらうよう指示しました。

手技により恥骨筋、長内転筋を中心とした太ももの内側の筋肉(内転筋群)をゆるめ、正常な動きに戻していきます。

また、肩甲骨の動きをよくするために、肩甲骨周辺の筋肉(前鋸筋、菱形筋)にも同じく手技による施術を行っていきます。

 

<施術目標>

 身体の使い方を見直し、足の付け根(鼠径部)にかかるストレスを減少させ、サッカーをしても痛みが出ない体を作っていく事を目指します。

 

<その他>

痛みの出ている太ももの内側の筋肉(内転筋群)に過剰に負担がかからないために、

 ・ダッシュ動作は今までの半分以下に

 ・ロングキックは禁止

 ・ストップ動作は急激に止まらず、ステップを細かく踏んで止まる

以上の指示を出しました。

 同時に指導したトレーニング(横向きになって足をあげる動き)も自宅で行ってもらうよう、お伝えしました。